ピロリ菌除菌は、高齢者でも胃がんのリスクを低減する可能性

ピロリ菌除菌は、高齢者でも胃がんのリスクを低減する可能性


韓国の集団ベース研究により、ピロリ菌除菌は高齢者を含む幅広い年齢層で胃がんの発症および死亡リスクを低下させる可能性が示され、従来の「ピロリ菌除菌は若年時のみ有益」とする考えに疑問が示された。

胃がんは依然として死亡率が高いがんの一つであり、2022年には発症数および死亡数ともに第5位で、新規症例は約100万例、死亡は65万例以上にのぼった。胃がんの主要な原因であるピロリ菌感染は、多くの場合小児期に獲得され、慢性的な炎症を引き起こし、それが長い年月をかけて胃がんへと進行することが知られている。除菌による胃がんリスク低下はこれまでに示されていたが、高齢者における効果は明らかでなかった。そこで韓国ソウルのカンブクサムスン病院消化器内科のYoon Suk Jungを筆頭著者とする研究者らは、高齢者を含む成人における除菌の胃がん発症および死亡への影響を評価することを目的に、韓国国民健康保険サービスのデータを解析した。

研究者らは、2009年から2011年にピロリ菌除菌治療を受けた20歳以上の916,438人を対象に平均12年間追跡し、年齢および性別を一致させた一般集団と比較して、標準化罹患比(SIR)および標準化死亡比(SMR)を算出した。

その結果、30歳以上のすべての年齢群において、除菌治療を受けた人は胃がんの発症率が有意に低かった。80歳を超える高齢者においても、除菌治療を受けた群では胃がんの発症率および死亡率が一般集団より低い状態が維持されていた。

年齢群標準化罹患比(SIR)標準化死亡比(SMR)
30~39歳0.720.64
40~49歳0.650.31
50~59歳0.650.29
60~69歳0.600.28
70歳以上0.520.34

同氏らは、この結果は年齢のみを理由にピロリ菌除菌治療に制限を設ける必要はないことを示唆しており、抗菌薬に耐えられる場合には80歳以上であっても治療の利益を受け得ると述べている。一方で、これらの結果は高齢まで除菌を遅らせることを支持するものではなく、除菌治療は若年時に実施することが望ましい点も指摘している。

関連する論説の中で、中国、北京大学がん病院・研究所のZong-Chao Liu氏およびWen-Qing Li氏は、高齢者に関するデータが限られていることを踏まえると、本研究は、年齢のみを理由にピロリ菌除菌を見送るべきではないことを支持する包括的な実臨床のエビデンスを提供していると評価している。

さらにLiu氏らは、胃がん予防のための集団レベルでのピロリ菌除菌の実現可能性が高まる中、ピロリ菌のスクリーニング・アンド・トリート戦略の実施には、地域の医療体制の能力や集団ごとの優先事項、さらに地域における胃がんの発症率およびピロリ菌の有病率を考慮することが不可欠であるとも指摘している。

  • 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/オックスフォード大学腫瘍部門)
  • 参考記事

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